WORK AS LIFE IN TAMBA 丹波で見つける、人・仕事・生き方【2】
1日目の記事はこちら。
歴史ある寺に流れる静かな時間、一瞬と永遠を感じた座禅
2日目に訪れたのは、野瀬にある桃花渓観音寺。ここで座禅ができると聞いて、中川ミミさんと一緒に訪れました。対応してくださったのは、御住職の平岩浩文さん。とても優しそうでほっとしました。
このお寺は1603年創建で、4つの集落の民衆が浄財を集めてお寺を立てたことが始まり。京都にも近い丹波の歴史は古く、戦国時代には多くの武将が群雄割拠し、明智光秀が丹波攻めをしたことでも知られています。1603年と言えば江戸幕府が始まった年。戦乱の世が終焉し、平和を願う民衆の思いが込められているかなと思いました。
座禅の前に、御住職から3つの心構えを教えられました。「調身」身を整えること、「調息」息を整えること、そして「調心」心を整えること。まず座ることが大切。坐禅をする姿そのものが「仏の姿」であり、悟りの姿なのだそう。
そして、座禅の作法を教えていただき、ただ座り、息をする。丹波の山間で静かに流れる時間は、一瞬にも、永遠にも感じることができました。
訪れる人を温かく迎える、裏庭の民俗資料館
座禅の後、前日の夜に懇親会でご一緒した小橋裕子さんから「ぜひ我が家の牛舎館を見て行って!」メッセージが入りました。牛舎館?何でしょう?
到着してみると、ニコニコ笑顔で待っていてくれた裕子さん。牛舎館にご案内いただくと、牛舎を改装したユニークな資料館でした。中には古い道具がいっぱい!
小橋家は春日町で代々続く農家。牛舎館は前庭にある小さな建物で、昭和30年頃に牛舎として建築。昭和時代は2~3頭の牛が飼われていたとのこと。その後物置にしていたのですが、2005年にミュージアムとして開放したそうです。中には農業に使った古農具のほか、農家の暮らしが分かる道具の数々が展示されています。
丹波にはこのような古いものが残る家がたくさんあるのだそう。「裏庭博物館構想」として、そこに住む人たちが訪れた人たちを受け入れて、土地の歴史や風土に触れる機会を作っていこうというのは面白い発想ですね。
奥丹波の森の中で自由にのびのび!心と体を癒す里山体験
2日目の午後は、ミミさんお薦めの場所へ。「ここは本当に癒されるよ。迷っていた時、よくここ来たんです」と。京都との県境方面へ向かい、どんどん山が近づいて・・・たどり着いたのが「丹波いちじまふぁーむ&奥丹波の森」でした。
荻野拓司さんとご家族の方々が待っていてくれました。
車を降りると、そこは静かな森の中。ツリーハウス、森の小屋、バーベキュー場、薪焚き風呂、赤煉瓦ハウスなどたくさんの建物や、無農薬・無肥料の自然栽培小麦や野菜、無農薬・無化学肥料のぶどうなど自然栽培の圃場があります。これらのほとんどは、荻野さんとご家族の手で作ったそう!
ここでは本当にいろいろな体験ができます。森の中で遊んだり、バーベキューをしたり、味噌づくりやジャムづくりができたり、宿泊もできるのです。とにかく、森の中にいるだけでも心が穏やかな気持ちになりますよね。
ランチには、おススメの窯焼きピザと玄米よもぎ餅のぜんざいのセットをいただきました。丹波の食材をふんだんに使った手作りの味。赤煉瓦ハウスの横にあるピザ窯で焼いた出来立てアツアツをパクリ。そしてぜんざいに使われているのは丹波大納言!ぜいたく!おいしかった!お腹いっぱいになりました。
穏やかに思いを話してくれる荻野さん。そこからは、奥丹波の自然と農業を通した人とのつながりに対する情熱を感じることができました。
※荻野さんのインタビューは後日公開。
予想してなかった!薪ストーブがこんなに「楽しい」なんて
さて、2日目の宿泊は、お友達のかなこちゃん宅。これでお泊り2回目。本当にありがとう!
お楽しみの晩ご飯は、細見工務店代表取締役の細見典行さんと共に、なんと工務店のオフィスで「薪ストーブクッキング」!
びっくりしたんですが、薪ストーブって、暖房だけじゃなくて、こんなにおいしい調理ができるのですね。一品ずつ薪ストーブに入れて、待っている間にグラスを傾けながら語り合い、取り出して熱々のところをいただく。なんとおしゃれで贅沢な時間でした。
オーブンで焼くより短時間で中まで火が通るから、食材のみずみずしさはそのままに、おいしくなるのですね。いろいろなレシピのアイデアが膨らむなあ・・・
いよいよ最後の朝、しばしお別れの雪景色とハンバーガー
3日目の朝は、まさかの雪。寒いけれど、美しい景色だなあ!
春日の下三井庄にある、古民家から再生プロジェクトが手掛ける「communecaTAMBA(コミュンカタンバ)」を訪れました。初めて丹波に来た時、改修のお手伝いを少しさせていただいたのがきっかけ。ロゴづくりにもアイデアを出させてもらったりして、なんだかもうプロジェクトの一員の気分になっているんです!だから、どんどん完成に近づいていくのでワクワクしているのです!
さて、柏原に戻り、「お試しテレワーク」もそろそろ終わり。雪の柏原陣屋跡の風情に惹かれます。そして柏原が生んだ女流俳人、田ステ女(デンステジョ)の像も雪をかぶっています。
「雪の朝 二の字二の字の 下駄の跡」
田 ステ女が6歳で読んだ歌を思わせる、旅立ちの朝です。
最後は、たんば黎明館にて。
この建物は、明治18年に氷上第一高等小学校として設立。専門家が「明治時代初期の教育施設として日本でも五指に数えられる建物」と評価するほどの貴重な建物で、兵庫県有形文化財に指定されています。
そんな歴史的建造物はレストランやカフェもあって、ワーキングスペースとして利用することもできるのです!なんて贅沢!私も、3日間の滞在のまとめをしばらくしました。
なんというか、気持ちが引きしまりますね。
そして、いよいよ柏原駅へ。最後に、ここへ寄らねば帰れない…そう、「レストラン山の駅」!ここでは
丹波の名物グルメが楽しめます。私が食べたかったのは、地元産食材をふんだんに使った「丹波プレミアムバーガー」。
丹波ポークを使った手作りベーコン、国産牛肉100%のパテのダブルサイズ!丹波市内産のレタスとトマトを添え、トマトとみそベースのソースをかけ、市島製パン研究所のバンズで挟んでいるという!ああ、書いているだけで、また食べたくなった…
かなこちゃんが食べていた豚めしも名物。おいしそうだったなあ…次はこれも頼もうっと。
特急の発車時刻までオーナーの奥畑和也さんや、店内にいた地元のお客様たちと語り合ってお友達になりました。この人のつながりが、本当、丹波の醍醐味なんですよね!またまたほれ込んでしまいました。
お試しテレワークを終えて気づいた、大切なこと
名古屋への帰路。3日間本当に楽しかった。何がって、ものすごくたくさんの可能性を発見できたから。
私が「すごいな」と思ったのは、昔から地元に住む人とUターン・Iターンで移住してきた人が、力を合わせて、生き生きと働く場所・暮らす場所を作っていること。
前に「どうして地元の人と移住者がこんなにうまくやってるんですか?」と聞いたら、ある方が「丹波は地元の衰退にいち早く気づいて、移住者施策を他の地域より早く取り入れてきたんです。だから、大変なこともあったけど、10年ぐらい前にはもうみんなで乗り越えていたかな」と教えてくれた。
そりゃ、今でも上手く行かないことや大変なことってあると思う。でも、丹波の人は、自分たちで問題を解決しようと行動を起こしている。人と人がつながって、まずやってみる、そこからチューニングして上手く行く方法を見つけたらいい。新しい仕事の広げ方、自分らしい生き方がそこにあるような気がしました。
書き手:橘 紀子/名古屋市在住。2018年に始めて丹波を訪れ、自然と歴史が織りなす風土と人々のパワーに惹かれて通い始めました。これからもっと丹波の人たちとつながって魅力を発見していきたいと思っています。